①日時 令和6年7月29日(月) 10:00~11:45
②講師 鈴木 みゆき(國學院大學 人間開発部子ども支援学科 教授)
③講演テーマ かしこく元気に機嫌よく~あと伸びする子どもを支える保育~
④記録者 佐藤 幸枝(みどり台幼稚園)
⑤講義内容
⓵【学校教育の新しい形とは】子ども一人ひとりが自分の良さに気づいてやりたいことをきちんと学んでいけるような「個別、最適な学び」の流れを作り、また、多国籍やグレーゾーンの子どもたちを受け入れていく「協働的な学び」という二つの方針を固めた。その背景には、IT化、デジタル化の普及による子どもたちの生活の変化がある。
②【IT化、デジタル化の時代による近視】インターネットの利用は年々増えていき、2~5歳児の5%が自分専用のスマホを持っている。こういう時代の中で心配されることの一つは「近視」であり、就学前の子どもの25%の視力が1.0未満とされている。しかし「近視」は外遊びによって予防することができ、その外遊びは幼稚園の園庭で行える。幼稚園には園庭が必置であり、園庭で自由に遊ぶ中に、紫外線ではなく「レッドライト」や「バイオレッドライト」を浴びていて、近視を抑制できるということが分かっている。
③【非認知能力を支えているものは何か】非認知能力は、IQや学歴のように外から見えるものではなく、自己肯定感、協調性、やり抜く力、思考力、判断力、応用力など検査では測定できない能力である。その非認知能力を支えているのは「睡眠」である。
④【睡眠の役割と脳】深い睡眠は大脳を休息させていて、睡眠中に免疫機能を高めるホルモンが出ている。
◎脳は3階建て
・1階は脳幹といって「呼吸・体温・心拍・睡眠・覚醒」を司っている生きる為の脳。
・2階は「喜怒哀楽・嗅覚」を感じる脳。
・3階は「前頭前野」で物事を論理的に考えたり、意図的に取り組む、粘り強くやり遂げる、コミュニケーションを取って気持ちのコントロールが取れる部分。 保護者に伝えて欲しい!
「前頭前野」は人間だけが発達したといわれており睡眠不足に一番弱い。
【脳幹は土台でありこの土台(生活リズム)がしっかりしていないと2階、3階を支えられない】
子どもたちは脳でいろいろな事を考える。幼児期の遊びの中でいろいろなことを経験することによって、子どもたちのしなやかな心と体が育っていくのである。
⑤【成長ホルモンとメラトニン】成長ホルモンは、骨を伸ばしたり筋肉をつけたり、子どもたちの体には欠かせないものでピークは思春期である。ぐっすり眠る事によって成長ホルモンは分泌され、メラトニンが働く。メラトニンとは、暗くなると出てくるホルモンで体のサビ止めでがん細胞をつぶしたりする免疫機能を高めるひとつである。また、ひげが生えたり生理がきたりするのを思春期がくるまでの間、抑制し、年齢に依存して出てくる(小学年低学年までがピーク)メラトニンは、体と心が思春期になるのを待って第二次成長を起こすパンドラの箱のフタである。メラトニンは真夜中に出てくるホルモンで光や刺激に弱い。
(ゲーム機、スマホなどの影響を受けやすい)
⑥【様々な概日リズム】脳と体を動かすためには体温を上げないといけない。上げるためにはエネルギーが必要である。体内時計は朝の光でリセットされる。早起き、早寝、朝ごはんはとても大事。
⑦【睡眠不足になると】睡眠不足で朝起きられない子は主に「忘れ物が多い、叱られる回数が多い、学力が低い、免疫力が低下する、肥満になるなどがあげられる。また、それに伴って初潮が早い子は生活習慣が乱れている子が多いなどのデータがあげられている。
⑧【学力と生活習慣】規則的な生活習慣をしている子どもや知的な好奇心を高めるような働きかけが行われている家庭(絵本が効果的)、保護者が幼稚園の教育に対して理解、協力的な家庭の子は、非常に学力が高い
(行事やPTA活動に参加するなど、学校教育に対する親和的な姿勢)
※各園の園長先生方へ! 保護者に伝えて欲しい!
小学校入学前(卒園前)の保護者会にぜひ、そういった活動に協力的だった保護者(1,2年生)を呼んで幼稚園から小学校の保護者対応の変化など、話をしてもらってください。
⑨【子どもの生活習慣改善】
<夜編>
・夕食の時間をあまりずらさない
・TVゲームは時間を決めて寝る1時間前にはやめる
・大人のTV番組をだらだら一緒に見させない
・子どもへの小言は8時までにしておく
・絵本を読んでもらったり子守歌を歌ってもらったり子どもが安心できる雰囲気を作る
・寝る前30分は部屋を少し暗くする
・寝る前に「おやすみなさい」を言って抱きしめる
・明日休みでもいつもより2時間以上遅く寝ない
・寝る前に明日の楽しい事を思い浮かべて話す
・夜遅く帰ってきた家族が起こしたりしない
<朝昼編>
・朝目覚めたらカーテンを開けよう
・家を出る1時間前には起きよう
・家族に「おはよう」「いってきます」を言おう
・朝食はしっかり食べよう
・自分で着替え、支度を確認しよう
・日中友達と元気によく遊ぼう
・給食(お弁当)を楽しく食べよう
・帰宅したら、手洗い・うがいをしよう
・ONとOFF(緊張と解放)を考えて生活を作ろう
・TVやゲームに関する我が家ルールを作ろう
【感想】
乳児期、幼児期の睡眠や基本的生活習慣がどれだけ大事であるか、改めて勉強になりました。
早寝とは21時頃までには就寝の準備を終え布団に入ることであり、あたりまえのように夜に保護者と出歩いている子ども達を見て私たちも注意ができずにいるのが現状である。園生活においても「昨日の夜が遅かった」という子どもがいて、昼寝をしたがっていることから、今後子ども達がのびのびと充実した園生活を過ごしていけるように保護者の方々とも連携していく必要があり、その伝授法も早速活用し、我々教員が、日々、保護者に伝えていく事が大切である。