24.07.29 夏期研修大会『第2分科会』

 第2分科会 表現遊びを通した子どもの育ちのために
~楽器遊びとうた遊び~ 講師 細田 淳子先生

司会 健伸幼稚園 八木 留美
記録 健伸幼稚園 青山三重子・福井 結

【細田 淳子先生のプロフィール】

 武蔵野音楽大学卒業。博士(学術)。オーストリアのオルフ研究所(ザルツブルグ)へ留学。その間ジュネーブのダルクローズ研究所へ短期入学しリトミックを、また、ハンガリーでコダーイシステムを研鑚。
 現在、東京家政大学教授(児童学科)。音楽表現及び弾き歌い科目を中心に保育者の養成を行っている。日本オルフ音楽教育研究会顧問、幼児音楽研究会会長。

主な著書
「わくわく音遊びでかんたん発表会注1」「自然をうたおう」「わらべうた手合わせ遊び子守うた」3冊とも鈴木出版「あそびうた大全集200」永岡書店。以上単著。「コードで弾き歌い」(共著)カワイ出版。「音あそびから始まる歌・合奏注2」(監修)ひかりのくに。保育内容「表現」(共著)ミネルヴァ書店。「オルフ・シュールヴェルクの研究と実践」(共著)朝日出版社。等

【本研修でのメッセージ】 ◎音楽表現で育てたいもの: 幼稚園教育要領等の求める領域表現に基づき、難しい曲を上手に演奏したり、歌えることでなく『楽しいからもっとやりたい』『歌うってたのしいな』と感じる音楽大好きな、歌が大好きな気もち・・・を育てたい。
◎日常保育における表現:発表会のための表現ではなく、毎日楽しむ音楽。発表会では保護者が観客ではなく一緒に楽しめる音楽表現を。(手拍子・一緒に歌う・子どもの手作り楽器を鳴らす等)

【1部 楽器遊び】
◎楽器遊びには2つの方法がある(1だけではない。2も忘れずに!)

1.拍子に合わせて鳴らす〈リズム奏法〉:練習必要 間違えたら訂正
     遊びの例:器楽合奏をする 2.拍子無しで自由に鳴らす〈イメージ奏法〉:練習不要 丸ごと認めて受け止められる
     遊びの例:絵本や紙芝居に効果音を付ける、イメージを音にする等

<3歳児は初めてのカスタネットどう触れる?> 
◎初めてのカスタネット:最初は持ち方は自由に、「どんな音が出るかな?」とカスタネットに自由に触れ、いろいろな 音の出し方を探索する時間を大切にしよう。ただし始めに、音を出す・止めるの合図や、物を大切に 扱うことの約束は決めておく。続いて、CD等の曲に合わせ好きに鳴らして楽しむ。(リズム奏法)二人向き合って宇宙語の会話も楽しい(イメージ奏法)。二人で向き合って差し出す左手のカスタネットをお互いに叩き合う。(本来どちらの手に持つのも自由だが、この場合は左右を合わせる。どの指に輪を通すかも好きに。)

◎カスタネット・ミニ知識 スペインの“カスタネット”等をもとに戦後に日本人の教師によって考案された。最初は男の子 青、女の子 赤で作られたが、今は赤青で男女兼用!

◎カスタネット・エピソードから考える:「合奏でカスタネット担当になった子が「はずれ~」と言った。」 フロアーから、かわいい装飾をする、両手にもって演奏、カスタネットの子どもが目立つようにする等の意見が出た。細田先生からは・カスタネットなしの合奏・カスタネットだけの合奏(注1)の提案があった。「カスタネットはハズレ!」という意見が子どもから出たこと自体が考えさせられた。

◎他の小物打楽器:持ち方より音の探索や曲に合わせて好きに叩くことからの導入は、カスタネットと同じ。

◎リズム合奏にむけて難しいリズムを複数覚えさせるのはやめよう。原則1つの楽器にリズムパターン1つ。それを繰り返す。

 全体で聞こえる音色に変化があれば合奏としてきれい(注3)。リズムパターンは言葉を付けると覚えやすい。
◎指揮で子どもに合図する

【2部 うた遊び】
◎子どもの歌の歴史(一般には童謡。実は時代により生まれた理由と名前がある)
江戸時代-わらべうた(唱えことばの揺れがメロディーになっている)
doremi音階の導入以降➡明治時代-唱歌,大正時代-童謡,昭和時代~現在-子どもの歌

◎わらべうた

  おてらのおしょうさん おせんべやけたかな なべなべそこぬけ おちゃらか   ちゃちゃつぼ かごめ あんたがたどこさ はないちもんめ ふくすけさん

♪うえからしたから♪スカーフを使って細田先生が実際に見せてくださいました。

◎替え歌であそぼう:『♪グーチョキパーでなにつくろう:フランス民謡の替え歌』と、『♪わたしゃおんがくか:ドイツ民謡の替え歌』を、替え歌にしてうたった。

◎替え歌にしてよい曲とは:作者不詳、外国の民謡など。勝手に替え歌にしては作者に失礼に当たることも。
(注1)カスタネットのための4部合奏『おさんぽカスタネット』『わくわく音あそびでかんたん発表会』pp.66-69 鈴木出版(注3)pp.92-103
(注2)輪ゴムのつけ方『音あそびから始まるうた・合奏』p.20ひかりのくに(注3)同書pp.45-125


【参加した先生方からの感想】

楽器を用いて言葉であそび、リズムパターンを聞き合い楽しむことや、子どもたちが拍子なしで自由に鳴らすことで絵本や紙芝居に音を付け音のイメージを描き表現する。どちらも音を楽しむ表現あそびのエッセンスとして、普段の保育の中で取り入れていきたいと思いました。

☆今回、研修に参加してみて、カスタネットの歴史を知ったり、わらべうたを新しく学ぶことができました。

音楽が好きだからこそ、楽器の使い方を正しく教えなくてはと思っていましたが、どんな音が鳴るのか、どんな使い方があるのか、それぞれで良いことも知りました。

☆替え歌にして良い曲は、作者不祥と書かれている曲や作家が歌詞を変えて遊ぶことを前提に作っている曲、外国の民謡などと知りました。替え歌を取り入れることによってその曲に親しみをもって歌えるようになること、子どものイメージが広がる1つの手だということを学びました。幼少期に「音楽って楽しい!」と思える工夫が一番大切だと思いました。

☆カスタネット1つで、できること、使い方、鳴らし方、様々なことを知ることができ、カスタネットと仲良くなれた気がしました。音楽が苦手な私でも簡単に楽器を鳴らすことができ、すぐに保育に活かせると思いました。

☆具体的な楽器の取り扱い方として、幼児にはカスタネットのゴムの素材を柔らかい物にする、トライアングルと音色は変わらない小さいトライアングルやエナジーチャイム等に変える等、扱いやすく楽しめる工夫を教えて頂き為になりました。温かな細田先生の人柄に触れながらの研修会で楽しめました。ありがとうございました。